この度、(公財)大分県産業創造機構より、代表の安樂が取材を受けました。
その時の取材内容を一部ご紹介します。
会社の事業内容について
築炉業というのは、技術の伝承が非常に難しい特殊な業種であります。他社の同じ業種は、働き手の高齢化が進み事業が成り立たず廃業するか合併をしています。全国でも数少ない築炉業は減る一方で、増えることがありません。人員が減少からヘッドハンティングが行われ、他社から良い条件を出された時に、こちらとしては給与・社会保険・福利厚生面で最善を尽くしていますが、そのまま引き抜かれる事もあります。そこで考えたのが、プラスアルファの利益を作り出すという事です。フィリピンで起業し、炉の販売等で利益を社員全体に還元させています。その考えから海外事業を始めました。
フィリピンでは火葬が発達しておらず、宗教の関係で土葬がメインでした。ごみに関しても法律上では燃やす事が不可能でしたが、法律が変わってきてごみの焼却も可能になってきました。インフラが整っていない事もあり立ち上げ当初は順調に進みませんでしたが、スタッフも頑張ってくれて、だんだんといい結果も出てきています。
JICA事業としてフィリピンの狂犬病の国家プロジェクトが立ち上げられ、大分大学さんを中心に研究がされています。狂犬病になった犬を捕まえた時に、今までであれば穴を掘りその中で処理をしていましたが、環境にも影響を与える処理法でした。そこで当社に、環境に配慮した処理方法がないかとご相談がありました。環境に配慮した動物焼却炉を提案した結果、話が受け入れられ、炉の制作を現在行っています。来月(11月)には設置予定となっており、動物焼却炉自体が認められれば、フィリピン中の保健所がある場所に施設できるようになると思います。そうなれば、最初に設置するのが当社の炉ですので、必然的に他の場所でも採用される可能性が出てきます。
また、炉が壊れた場合修理が出来ずに新しく買い替え必要となりますが、当社では現地に子会社もあり即メンテナンスが可能な上、炉を6分割で制作しているので、部分修理もできます。事業を停止せず、部分修理が可能な為経費も軽減できます。今回のプロジェクトの基盤がしっかりしたものになれば、フィリピンに当社の動物焼却炉が広がっていくと考えています。
人体火葬炉に関しても、コロナウィルスが流行し海外の他企業の炉で火葬する際に臭いや煙の問題が出てきました。新しい炉に入れ替えるのであれば日本製との要望があり、年末から年明けには人体火葬炉も納品予定です。
以前、フィリピンで事業をしている日本企業の方と話をする機会がありました。炉や発電所を持っており、修理の依頼を本来であれば日本の企業にお願いしたいという話を伺いました。しかし、日本から対応してもらうとコスト面でかなり負担がかかる為、海外企業に依頼せざるを得ないとの話を聞き、当社から次のように提案させていただきました。「私共はフィリピンに会社があり、日本で働いた実習生も実習期間が終わりフィリピンに戻ってきています。その実習を経た社員を間におく事により、コストを抑えたジャパンクオリティのシステムが築けています。」この事が受け入れてもらえ、下請けの手続きを行っています。
また、フィリピンでは経済的に余裕がない方は墓を持てず、処理する場所がない事が問題となっています。そこで、当社では人体の火葬・骨を粉骨する施設を建設し、金額を設定した上で遺体や骨の処理を請け負いを提案しています。フィリピンでぜひ行いたいと考えている仕事です。
国内では、木下築炉のノウハウを活かせる事業として墓じまい事業を進めています。当社の墓じまいは、業者に墓石を解体してもらい、墓石の産廃処理を行います。長年墓の中にある遺骨は湿気もひどく、変色し異臭がする場合もあります。当社ではその遺骨をまず乾燥炉を用いて乾燥させ、実用新案を取得している粉骨機で直径2mm以下に粉骨します。その後、供養塔を建設しその中で供養していく、または海洋散骨を行うなど様々な対応を考えております。そして、最後にきちんと報告書を作成し、お渡しするという流れです。墓守がおらず悩んでいる高齢者や県内に墓はあるが居住が県外で墓の管理が難しいという方、お墓参りの負担軽減を考えている方はこの事業に興味を持つのではないかと考えています。
また、私の方では、炉を持っている民間企業や産廃会社のメンテナンス工事を受注したいと考え営業しています。1年に2回のメンテナンスを行うのであれば、10社であれば年に20回、20社であれば年に40回となります。そのような部分から、事業形態のベクトルを変えていきたいと考えて動いています。
人材の育成について
利益とは何かを追求した時に、利益をお金と考える経営者がいますが、私の場合利益は人と考えています。例えば、1つの仕事が通常であれば5日で終わり、その分利益が出たとします。しかし、ある人が行えば10日かかり、利益が出なかったとします。利益が出ないからといって、その仕事をさせないという事をせず、同じ仕事をさせる事で必然的に経験が積み上がり、最終的には利益も生まれます。つまり、その人が仕事を覚えていくという事が利益になり、仕事をたくさん受けるほど売上にも繋がります。
フィリピン事業でも現地で働き手を雇う際に、一生懸命家族の為に働くという人に会社で仕事をしてもらいたいと考えています。また、働いてもらう上で重要だと捉えているのは、平等に扱う事です。仕事が出来るか出来ないかに関わらず、平等に扱わないと会社が成り立ちません。その扱いが苦手な方は社長と社員で線引きをされていると思います。しかし、私の場合そうではなく、今でも現場にも直接行き、営業も行い、働く人の声も聞きます。現場に出る事により、人材の適材適所を見極めています。
人材も集まりつつあるので、今後の事業継承を行う際も周りに助けられながら滞りなく進められると考えております。